手製本をはじめたきっかけは
図書館で働いていたときに
壊れた本に出会ったことでした
「本を直す」ことを学ぶ、
のではなく
まずは「本をつくる」ことを学ぼう
と思いました
本を手でつくることができれば
本を手で直すことができるようになるのでは
そう、考えました
・・
●Q&Aについて
西荻窪で開催している
本の修理や手製本講座では
少人数なので質問に個別にお答えできるのですが
図書館等、多人数で開催される講座については
すべての質問にお答えできないこともあります
アンケートでいただいた質問については
講座終了後にまとめてお答えしてきましたが
これまでのQ&Aについて広く共有することで
より多くの方に本の修理について
知っていただく機会になると思いまして
こちらにアップすることにしました
(当該図書館さんの許可を得ております)
※主に公共図書館である図書の修理についての
Q&Aです。(個人所有の本や文化財の書籍については
保存や修理目的が異なります)
※初心者の方向けのQ&Aになります
※前提として
東京都立図書館の保存と修理についてのQ&A
しっかり読んでください→★
●本の修理をする上で・・
よくある質問としては
この壊れ方はどう直したらいいですかというものです
答えはひとつではないこともあります
その本の所蔵目的、利用目的、
個人の場合には自分だけの楽しみなのか
子どもに引き継いでもらいたい本なのか
また、図書館の現場においては
どれだけ修理時間を取ることができるのか、など
今後のその本の行方、予算などにより
簡単に直したり、しっかりと直したり
方法が異なってきます
そして、部分的な直し方を何通りか覚えたとしても、
それ以外の壊れ方に出会った場合にわからなくなり
行き詰まってしまうと思います
遠回りになるかもしれませんが
中身の綴じ、表紙のつくり方、
中身と表紙の合わせ方、
本の構造の把握、などを合わせて
本をつくることを学びましょう
自分の手を動かしてきちんとつくってみてください
技術不足、理解不足、出てくると思います
ステップアップ、ブラッシュアップしていけば
どのような壊れ方であっても
自分で考えてどのように直したらいいか
わかるようになります
図書の修理Q&A(Qについては原文まま)
・・・・・・
Q 製本について知るにはどうしたらよいでしょうか
A 本をよく見ること。どうやって作られているのか見るだけでも違います。廃棄の本を分解してみるのもよいです。どう出来ているか構造がよく分かります。そのあと、自分でつくってみてください。
Q どの程度の破損まで基本的な技術で修理できるのか、修理に際してやってはいけないこと。
A 製本の基本的な技術が身についていれば、ほとんどの本を修理することができます。やってはいけないことは、本に負荷をかけるような直し方です。
Q 個々の本に対する修理方法の立て方、どの壊れ本を糸綴じで修理するか、見返しをとって修理するか、あるいはボンド修理で良いとするか、迷う。壊れ具合と、あと何年使いたいかを目安としているが、アドバイスがあればうかがいたい。
A 修理の方法の基本は、元のつくり方と同じようにつくり直す、というものです。糸綴じのものは糸綴じで直す、のり綴じのものはのりで直す、が基本です。ただ、のり綴じについては糸綴じにバージョンアップして直すのがより良いです。見返しを外すのは、中身の背を露わにして、内側から直したい時、です。基本的にはすべて内側から直してもらいたいのですが、短期利用の本や時間的に難しい場合は外側からとりあえず補修という場合もあると思います。また、見返しそのものが破れている時にも見返しを取る場合があります。利用頻度が高そう、長持ちさせたければより丈夫に直して、利用頻度が低そうであったり数年で廃棄されるようでしたら簡易修理、という方向かと思います。
Q 長期保存する本と、あと数年使えれば良い本の修理があると思うが、日常的には後者の修理が多いので、そちらの修理について教えて欲しい。
A 長期保存、数年利用の本、そこまで明確に分けられるものではないですが、破れに補修テープを使うか和紙を使うかというのは大きく異なると思います。数年利用の本だとしてもよく読まれる本に関してはきちんと直さないと何度も直すことになり二度手間三度手間になります。基本的にはすべてきちんと直す、きちんと直せば壊れにくいです。
Q 簡易修理について
A 簡易修理というのは、わかりやすい壊れ方をしている本にのみ対応できるものだと思います。今回の研修でいえば、文庫本のページが1枚外れている時、などです。のどに接着剤を塗り、差し込む、そんなものが簡易修理かと思います。簡易修理という漠然としたお題ですと答えにくいので、このような回答をご了承ください。
Q ページ破れの和紙での補修はどんな紙の本にも使えるか?
A 写真集などの表面がツルッとしたアートコート紙のようなものにはでんぷんのりだけでは和紙が着きづらい場合があります。その場合は、紙の表面を少しやすりでこすってコート面を取ってから和紙を貼るとよいです。
Q 無線綴じの本にノコギリで跡をつけて「こより」をうめこむ方法について。「こより」ひとつひとつが本の表紙の内側につく方法はやや見栄えの問題がある。他のやり方はあるか。見返しがついている本ならば、「こより」を見返しの下に入れればよいか。
A 「こより」が表紙の内側についているのは、確かに見栄えがよくないです。見栄えを気にするのであれば、「こより」や麻紐は埋め込まず、接着剤だけで無線綴じのまま直すことになります。または、こよりを背幅と同寸で切ってしまう、など。もちろん、見返しのある無線綴じの場合には、見返しの裏に「こより」を留めれば問題ないです。
Q 無線綴じを解体して無線のまま補修する方法のポイントについて。寒冷紗で背固めするのみということか。
A 無線綴じを無線のまま補修する方法は、とにかく1枚1枚の背にあるもとの接着剤を取り除き、ビニダインで背固めすることです。ボンドよりもビニダインの方がページが外れにくいです。また、接着剤を厚く塗らないこともポイントです。厚みで背が重くなります。寒冷紗はなくてもいいです。寒冷紗を使うのであれば、裏打ちされてない寒冷紗のほうが背に馴染みます。
Q 背にのりを入れる修理について
A 難しくはないのでぜひやってみてください。そのために、練習として無線綴じやあじろ綴じ、自分でつくってみるとよいです。構造の理解と、接着剤の量など確認の上、実践してみてください。
Q カタログなどに載っていない修理道具(例えば糸の細いもの)の入手方法
A 麻糸がよいので、麻糸専門店ラミノはどうでしょうか。キハラ、リーブル、まるみず、など製本道具や材料を扱っているショップも参照してみてください。ラミノ(→★)
Q 糸綴じをしている際に糸が足りなくなった際の糸のつぎ方について
A 折丁を多く綴じていると必ず出てくる糸継ぎです。『はじめて手でつくる本』ヨンネ著のp38 25−29を参照ください。こちらも参照ください(→★)
Q 雑誌『こどものとも』などの修理について(表紙と中身がはずれてしまうので、大きなホッチキスでとめてあります。)
A もとの構造はどうなっているか、よく見て確認してください。中身と表紙の合わせは、背の部分とノド5mmほどが接着剤で着いているかと思います。同じように着けてください。できればホッチキスは外して、糸で中綴じをして綴じ直すとよいです。より丈夫に直す場合には、表紙も中身とまとめて一折中綴じの綴じ方で糸綴じすれば中身が外れにくいです。
Q リンクステッチについて
A リンクステッチは、一本の針でかがる支持体のない綴じ方になります。『はじめて手でつくる本』P68 アルバム製本の綴じ方をリンクステッチにして紹介しています。ここに掲載しているのはアルバムなので折丁が普通の本の折丁が異なりますが、折丁の理解があれば綴じ方はそのまま参考になると思います。
Q 図鑑のページが取れた時の修理方法について
A 図鑑のページがとれた時のやり方ですが、糸が切れてしまっているか、切れてないかで変わってきます。切れてなければ背固めのノリが弱っているので、できるだけ背中側にのりをつけて折丁間の外れを接着します。糸が切れてしまっている場合、パピヨンかがりで綴じ直すといいと思います。
Q 水濡れしてしまったページの直し方(状態の改善方法)などについて
A 水濡れ、全体に濡れてしまった場合、一部分の場合で異なりますが、とにかく水分を取るしかないです。最初にリンクした都立図書館のQ&Aをみてください。
お悩み Q&A
Q 文庫本がすぐに壊れてしまうこと。
A 文庫本に関しては無線綴じですので、講習でもお伝えしたように、一度中身と表紙を分けてから、中身の背に切り込みをいれ、「こより」か、麻紐を固定する方法で直すとよいです。
Q 修理ボランティアへの依頼の仕方がうまくボランティアの方に伝わらず少し困っている。
A ボランティアさんへの依頼の仕方について。まず、修理する本を分別することからしてみてはどうでしょうか。貸出が多いから早く直したい本、遅くてもよい本、破れを直す本、背を直す本、などその本の修理の重要度、修理箇所によって分けてから依頼を出してみては。
Q ボランティア時間や量、道具等により細かい修理ができない可能性がある小学校の保護者などの、ボランティアさんの講習向けにはどういう風に説明したらよいか?
A ボランティアさんに講習をするには、まずは自分が修理をできないとですよね・・。勉強する時間も少ないと思いますが、修理の本を読むだけでもより理解できます。また、ボランティアさんの中にもベテランさんがいると思いますので聞いてみるのもいいと思います。
Q 真っ直ぐ切ったり折ったりするのが苦手なのですが。
A 真っ直ぐ切るのは、身体との関係性もあります。定規をしっかり置き、定規に沿わせてカッターを真っ直ぐ奥から手前へひきます。座らずに立って切ると力も安定します。カッターは鉛筆持ちが安定します。紙を折るのは、ヘラなど道具を使うと力がしっかり入ります。どちらにせよ何回も紙を扱い、紙と仲良くなることが大切だと思います。
【参考】
・糸の留め方
太い糸の場合、『はじめて手でつくる本』P9 8−14参照
細い糸の留め方、『はじめて手でつくる本」P29 7−10参照
・二折以上の糸綴じ
これはパピヨンかがりという、和綴じの列帖装の綴じ方を洋装本にアレンジしたものです。栃折久美子著『手製本を楽しむ』(大月書店)P62参照
パピヨンかがりは様々な糸綴じ方法のなかで、機械綴じに1番近い綴じ方になります。
・綴じ糸の継ぎ方
『はじめて手でつくる本』p38 25−29参照
こちらも参照ください→★
・基本の角背の表紙
『はじめて手でつくる本』P30 20―53参照
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